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池袋不動産FP事務所 

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火災は心的瑕疵(隠れた欠陥)にならないか?

 2017-10-01 ブログより 
 

またまた転載フリーのREITOメルマガより。

不動産適正取引推進機構 (REITO)

 

ご覧いただきたいのは、2 判決の要旨、特に(3)(4)。

不動産または法律の専門家の方は、全文をご覧ください。

(一部ブラウザなどでは、レイアウトが崩れる可能性があります)

 

-----※以下転載

◆◇◆ 最近の判例から ◆◇◆

                  

-火災事故と原状回復-

火災等により貸室に損傷を与えた賃借人には、貸室を本来機能していた状態に戻す工事を行う義務があるとされた事例(東京地判 平28・8・19 ウエストロー・ジャパン)

 

 貸室内をゴミ屋敷にしたうえ、火災を発生させ、その後退去した賃借人及びその連帯保証人に対し、賃貸人が原状回復費用等の支払いを求めた事案において、貸室を本来機能していた状態に戻す工事費用及び同工事期間中の逸失利益の請求を認め、火災発生により従前より賃料を減額して賃貸せざるを得ないとした逸失利益の請求については否認した事例

(東京地裁 平成28年8月19日判決 一部認容 ウエストロー・ジャパン)

 

1事案の概要

(1) Aが昭和44年から所有する本件マンションの貸室に平成7年11月1日から入居していた賃借人Y(被告)は、平成13年10月6日、Aと下記条件にて賃貸借契約を締結した。

ア 賃料・共益費:月額70,000円

イ 敷金:68,000円

ウ 期間:平成13年11月1日~同15年10月31日

エ 火災保険:Yは火災等保険に加入する。

オ 更新料:68,000円

(2) 平成23年9月30日、賃貸人X(原告)は、Aより賃貸人の地位を相続した。

  本件賃貸借契約は平成25年10月31日に期間満了となったが、Yは更新契約を締結せず、かつ、火災保険にも加入しなかった。その後、本件賃貸借契約は法定更新された。

(3) 平成27年2月4日、Yは本件貸室において、タバコの不始末による火災を発生させた。

Yは、本件火災によって本件貸室を使用できなくなったため、同月28日に退去した。

(4) Xは、Y及び連帯保証人に対し、ア本件貸室の原状回復費用(各室のドア、壁紙・フローリング、給排水設備、電気設備及びガス設備の補修費用の補修費用等)143万円、イ原状回復工事が完了するまでの間の本件貸室を賃貸できなかったことによる逸失利益

49万円(月額7万円×7か月分)、ウ本件貸室の新たな入居者に対する本件火災事故の告知により賃料を減額せざるを得ないとした逸失利益33万6千円(月額7万円×20%

×24か月分)」の支払を求めて提訴した。

 一方、Yは、「本件マンションは築造から46年を経過しており、またYは本件貸室に19年以上居住していたことから、壁のクロス、フローリング、襖、流し台といった部分については、国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」において想定されている経年変化の年数を既に経過しており、これらは賃貸人であるXが負担すべきである。Yは業者に依頼して、本件貸室のオゾン燻蒸による消臭作業、壁紙剥がし、床剥ぎ等の作業等を、合計112万円余をかけて工事を行っており、原状回復義務を一部履行している。」などと主張してこれを争った。

2判決の要旨

 裁判所は、次のとおり判示し、Xの請求を一部認容した。

(1) 証拠によれば、平成23年10月の時点で、本件貸室はいわゆるゴミ屋敷の状態であり、平成27年2月24日に残置物の撤去作業を行った時点においても、押入れ・床面・風呂場やキッチンに夥しい量のゴミが詰め込まれていた。また、Yの退去後の平成27年3月上旬時点において、キッチンは床面のフローリングが剥がされ,キッチンとリビングとの間を仕切る引き戸はガラスが破損していた。また、バルコニーとリビングを仕切る窓の上に開けられた通気口の網戸は破損し、リビングの壁には穴を補修した跡が複数ある。風呂場においては、風呂場とキッチンを仕切るドアのガラスが無くなっており、床面や壁面の表面が剥がれ、コンクリートには亀裂が入っている。

 浴槽の蛇口は錆び付いて使用できず、浴槽の汚れも著しい。

 本件火災が発生したのは本件貸室のリビングであるから、以上の設備の破損は、本件火災とは関係なく、Yによる不適切な手入れ又

は用法違反が原因であると認められる。

 以上によれば、Yは、本件火災前の劣悪な使用方法及び本件火災により、通常使用により生じる程度を超えて本件貸室の設備を汚損

又は破損したと認められる。

(2)   Yは、本件火災前の使用及び本件火災により汚損又は損壊した本件貸室の設備を原状回復する義務を負うが、ガイドラインの経年変化の考え方が本件にも適用されるべきであり、本件見積書記載の工事は本来賃貸人であるXが負担すべきものも含まれていると主張する。しかしながら、ガイドラインの考え方が本件に及ぶか否かにかかわらず、Yは、通常使用していれば賃貸物件の設備等として価値があったものを汚損又は破損したのであるから、本件貸室の設備等が本来機能していた状態に戻す工事を行う義務があるというべきである。

 また、Yは原状回復工事を一部行ったと主張するが、これが認められるのは玄関ドアの補修工事に過ぎない。

(3)    以上により、YはXに対し、本件貸室の設備等を本来機能していた状態に戻すための補修工事費用143万円、原状回復工事が完了するまでの間、新たな入居者に本件貸室を賃貸することができなかったことによる逸失利益49万円の支払義務を負う。

(4)  ところでXは、本件火災事故の告知により、本件貸室の新たな賃借人の賃料が減額するとも主張するが、本件火災の告知により、新たな賃料が従前より確実に減額される

との根拠は薄弱であり、将来の賃料の減額分を逸失利益と認め

ることは相当ではない。

 

3 まとめ

 ガイドラインにおいては、経過年数を超えた設備等を含む賃借物件であっても、賃借人は善良な管理者として注意を払って使用する義務を負っていることは言うまでもなく、賃借人が故意・過失により設備等を破損し、使用不能としてしまった場合には、賃貸住宅の設備等として本来機能していた状態まで戻す費用(工事費や人件費等)などについて、賃借人の負担となることがあると示されています。

 通常一般の使用によるものではなく、賃借人の著しく不適切な使用により生じた本件貸室の原状回復費用の負担について、「19年以上の居住により、ガイドラインで想定の経年変化の年数を経過している壁のクロス・フローリング等については、賃貸人が負担すべきである。」との賃借人の主張を退け、通常使用していれば賃貸物件の設備等として価値があったものを、汚損又は破損させた賃借人には、本件貸室の設備等が本来機能していた状態に戻す義務があるとした本件判決は、参考になるものと思われます。

-----※転載おわり

 

民法改正により賃貸物件の原状回復義務も法制化される中、(3)ゴミ屋敷の火災については国交省ガイドラインに沿わず精算を行うことを認めた判決は、当たり前ではあるが賃貸人にとって非常に有意義な判例と言えます。

 

しかし、(4)にて、実際には(良心的なら)告知する火災という心的瑕疵の賠償を却下されています。

実際に焼死者こそいなくとも、気後れして入居をためらう場合も考えられます。

これが認定されないのは、告知を隠す原因ともなりかねないので困ったことになりかねません。

ただ、実際のところ「入居をためらう場合も考えられる」に留まるのも確かなので、判決としてはなかなか認容し難いのも確かでしょう。

 

こうなると、告知しない業者も出そうですが、正確に死傷者がいない点も強調して粛々と実務を進めるより他、ないのかもしれません。

 

有り難さ、厄介さ半々の前例となりそうな判例のご紹介まで。

​2017/10/01